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お世話になった出版業界の先輩が
雑誌『プレジデントネクスト』の村上春樹特集を担当されることになり、
取材のお手伝いをしたのがきっかけで、とても興味深い事実を知ることになったのでご紹介させていただきたいと思います。
村上春樹とノーベル賞をテーマにした特集ということで、それについては置いておいたとしても、
村上春樹の台湾での人気ぶりは、アジアだけでなく世界でもトップクラスの人気ぶりだということを
恥ずかしながら今回初めて知ることになりました。
台湾で人気ということはなんとなく感じていたものの、まさか世界トップクラスだったなんて!
PRESIDENT NEXT(プレジデントネクスト)Vol.19「村上春樹とノーベル賞」
この特集内の↓このパートで日本から取材班がいらっしゃったのでした。
『翻訳者、研究者、ファンの証言 「海外人気の発祥地、台湾現地ルポ」なぜ、私たちはMURAKAMIに心を奪われたのか』
村上春樹というテーマにつられて取材についていった私がとても興味深かったのは
彼の本が台湾でどれくらい売れているとか、そういったことももちろんですが、
彼の小説にちょっとだけ出てくる「小確幸」という言葉が台湾で独自の進化を遂げて広まっているということ。
村上春樹ファンの皆様、ご存知ですか?「小確幸」という言葉
今やこの「小確幸」は台湾の至るところで使われています。
でも、恥ずかしながら、私はこの言葉の出元が村上春樹の小説だったという事実を知りませんでした。
「小確幸(日本語では「しょうかっこう」と言われているそうです)」とは村上春樹のショートエッセイ集『ランゲルハンス島の午後』の中で出てくる言葉で、村上春樹による造語だそうです。
引き出しの中にきちんと折ってくるくる丸められた綺麗なパンツがたくさん詰まっているというのは人生における小さくはあるが確固とした幸せのひとつ(略して「小確幸」)ではないかと思うのが、これはあるいは僕だけの特殊な考え方かもしれない
引用:『ランゲルハンス島の午後』スポンサーリンク
この「小確幸」という言葉、台湾では独自の発展を遂げていて、「大確幸」という言葉も使われたりしています。
(どうしよう、今Googleしてみたら、すでに「大確幸旅行社」という会社までありました!笑)
この言葉が広まったのはさまざまな説がありますが、おおかたこんな流れと言っていいのではないでしょうか。
- 台湾は不景気なので、「小確幸」を大事にしようというムードがあった
- 選挙活動の立候補者演説で「僕たちの小確幸を奪うな!」と言ったのをマスコミが報道して広まった
- 若者たちが「私に小確幸」と自分にごほうび的な意味で使うようになった
- 「小確幸」ばかりを追っていると「大確幸」をつかみ損ねるぞ、と最近ではシニカルな意味でも使われる
アジアでの村上春樹人気の立役者は、村上作品をこよなく愛するひとりの翻訳家
そしてそれ以上に私が心底感激したのが
村上春樹のほとんどの小説の繁体字中国語版の翻訳を手掛けられている翻訳家・賴明珠先生にお会いできたことでした。
Wikipediaに書かれていることがすべて真実ではありませんが、
賴明珠先生が手掛けられた村上作品の数の多さ(50作品以上!)はここ↓からも知ることができます。
賴明珠先生@Wikipedia
本誌にも掲載されていますが、
賴明珠先生がいちばんお気に入りの小説が私と同じだったのも、小さい偶然ではありますがとても嬉しい喜びでした。
また、先生のインタビューを通して
どんな仕事も「好き」という気持ちが強い人にはかなわないということを改めて実感しました。
先生はもともと翻訳家ではなく、コピーライターだったそうですが、
村上作品に魅せられて、これを繁体字中国語に翻訳したいという気持ちを原動力にここまでたくさんの作品を翻訳されたのだそうです。
いけない、いけない。つい語りたくなりますが、あまり多くを語るのはマナー違反ですね。笑
このルポでは、台湾で村上春樹がどれくらい浸透しているのかをテーマに、
台湾を代表する書店「誠品書店」で村上作品はどのくらい売れているのかをはじめ、
台湾の有名私立大学内に設立された「村上春樹研究センター」や
村上作品をイメージしたカフェ「海邊的卡夫卡(海辺のカフカ)」なども取材されています。
このカフェ「海邊的卡夫卡(海辺のカフカ)」のオーナーから
「賴明珠先生は台湾ではほとんど顔写真を出さないんだよ」と驚かれたくらい貴重なカットも必見です。
ノーベル賞と言う言葉だけにとらわれずに、ぜひ読んでみていただけたら嬉しいです。
それでは今日はこの辺で。ありがとうございました。
PRESIDENT NEXT(プレジデントネクスト)Vol.19「村上春樹とノーベル賞」
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