ジェイ・チョウ(周杰倫)の「お母さんの話を聞くんだよ」という歌

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台湾人はカラオケ(KTV)が大好きですよね。
私は超がつくほどカラオケ苦手なんですが、
家族のように大事な友人や、驚異のスルー力を持つ台湾人の友人とはかろうじて一緒に行って楽しむことができます。
たまに連れられて行くスナックなら、昭和の歌を楽しく歌えます。『北空港』とか。笑

台湾で友人から教わった激いい歌のことをご紹介したいと思います。
それはジェイ・チョウ(JayChou/周杰倫)の『聽媽媽的話(Listen to Mom/お母さんの話をちゃんと聞くんだよ)』という歌。

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カラオケのMVにまさかの本物のジェイチョウ親子の写真!

シングルマザーに育てられた大スター・ジェイ・チョウ

ジェイ・チョウは中華圏ですごい人気のミュージシャン。
ご存知の方も多いと思います。

ただ今回は、彼のことを好きとか嫌いとかいうのはテーマから外したくて、
私が素通りできなかったポイントはジェイ・チョウが14歳・中学二年生の頃にご両親が離婚し、
シングルマザーに育てられているという背景。

↓ 公式Facebookファンページでお母様のお誕生日に描いた絵

1979年1月生まれということなので今年で38歳となるわけですが、
今でも母親をとてもとても大切にしていることで知られています。
というか母親だけではなく家族をとても大事にしていて、
おじいちゃん、おばあちゃんなど家族をテーマにした歌詞をたくさん書いています。

ピアノとの出会いをくれたお母様

以下、歌詞を読んでいただく上で知っておくと理解が深まるポイント。

*以下はネットからざっと収集した情報なので間違っていたらぜひご指摘ください。訂正します。

彼はピアノの才能があることで知られていますが、
ピアノとの出会いはジェイ・チョウが4歳、小学校の美術教師だった母親に幼稚園児の頃にピアノ教室に連れて行かれた時だったそうです。

活発な男の子だったジェイ・チョウがピアノの前ではとても静かになり、先生の演奏を真似してみた様子を見て、先生から才能があると言われたそうです。

ジェイ・チョウは彼自身、自分のピアノの才能をテレビ番組の司会者・吳宗憲さんに見つけてもらったことがブレイクして成功するきっかけだったと振り返っています。

↓ 以下、インタビュー記事より抜粋

自分は一人親家庭で育ったので、
絶対に反抗できない、みんなを失望させてはならないと自分自身に言い聞かせています。
母親と一緒に生活していた当時も母親と親しく、
母親に向けて歌を書いたら僕の成長を喜んでくれました。
こういうサイクルこそが正しいと思っています。

我來自單親家庭,所以就告訴自己,絕對不能叛逆,不能讓大家失望。
當時是跟媽媽住,也跟媽媽比較親,
寫歌給她,她很開心,覺得我長大了,進這個圈子是對的。

出典:天下雜誌第521期(2013/04/30)「周杰倫:你就是你人生的伯樂」

『聽媽媽的話(Listen to Mom)』本人が出演していてとてもジーンとする公式MV

超ざっくり意訳(間違ってる可能性大)

幼い頃の自分に語りかけているような歌詞です。

(子供に向かって)きみにはきっとたくさん分からないことがあるよね?
どうして他の子は漫画を見ているのに 僕は絵を勉強しているんだろう
そうピアノに向かって話すんだ
他の子はゲームをしているのに
僕だけ壁によりかかりながらABCを覚えてる

僕は大きな飛行機が欲しいって言ったのに もらったのは古い録音機
どうしてお母さんの話を聞かなきゃいけないのか 
大きくなったら きみもきっとこの話が分かるようになるよ

大きくなった後に僕は分かり始めたんだ
どうして僕は他の子より早く走れるのか 高く飛べるのか
将来みんなが読むのは僕の書いた漫画 みんなが歌うのは僕の書いた歌なんだ

お母さんはきみに苦労を見せない あたたかなレシピが彼女の心の中にある
時間があったらなるべく手をつないであげて 手をつないで一緒に夢を見よう

お母さんの話を聞くんだよ 彼女を傷つけたらダメだ 早く大きくなって 大きくなってこそ彼女を守れるんだ
美しい白髪は 幸せの中から芽生えたんだ 天使の魔法 慈愛のぬくもり

きみの未来の中で 音楽はきみの切り札になるんだ 切り札を手に恋愛をするんだ
あ! 悪いことは教えたくないんだ やっぱりお母さんの話を聞くんだよ
恋愛はまた後でね

僕はきみの未来を知っているよ
でもお母さんは僕よりもっとよく分かってる

きみは他のみんなみたいにカバンに落書きしたりするだろうね
でも僕は「お母さん僕はちゃんと勉強するよ」って書くことをおすすめするよ
ちゃんと勉強しろだって… 僕の口からそんな言葉が出るなんてね
きみに負けて欲しくないんだ だから僕はちゃんと勉強しろって言うんだ

お母さんがくれた手編みのセーター ちゃんとしまっておくんだよ
母の日が来たら「まだ取ってあるよ」って伝えるんだ

そうだ、僕はこれから周潤發(チョウ・ユンファ)に会うよ
だからきみはクラスメイトに「彼は僕の未来のパパだ!」って伝えてもいいよ
(*ジェイ・チョウと周潤發は映画『满城尽带黄金甲(Curse of the Golden Flower/王妃の紋章)』親子役で共演したことがある)

小さい頃に書いたラブレターが見つからないんだ
きみは書き終わっても人に送らないほうがいいよ
だって2日もすれば きみはそれを運動場で見つけることになるから

きみは流行の歌が好きになるだろう
だって張學友(ジャッキー・チュン)が『吻別(Take Me to Your Heart)』を歌う準備をしているからね

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お母さんの話を聞くんだよ 彼女を傷つけたらダメだ 早く大きくなって 大きくなってこそ彼女を守れるんだ
美しい白髪は 幸せの中から芽生えたんだ 天使の魔法 慈愛のぬくもり

お母さんの話を聞くんだよ 彼女を傷つけたらダメだ 早く大きくなって 大きくなってこそ彼女を守れるんだ

大きくなった後に僕は分かり始めたんだ
どうして僕は他の子より早く走れるのか 高く飛べるのか
将来みんなは僕の書いた漫画を見るんだ みんなが僕の書いた歌を歌うことになるんだ

お母さんはきみに苦労を見せない あたたかなレシピが彼女の心の中にある
時間があったらなるべく手をつないであげて 手をつないで一緒に夢を見よう

お母さんの話を聞くんだよ 彼女を傷つけたらダメだ 早く大きくなって 大きくなってこそ彼女を守れるんだ
美しい白髪は 幸せの中から芽生えたんだ 天使の魔法 慈愛のぬくもり

あわせて聴きたい歌『爸.我回來了(Dad,I’m back/お父さん ただいま)』

暴力を振るう父親に対して子供が怒りを抑えながら語りかけているような歌です。

ちなみに一部誤報されているそうですが
ジェイ・チョウの父親が母親に対してDVがあったという事実はないそうです。

ジェイ自身、こう語っています(公のインタビューだからなのかもしれませんが)。

↓ 以下またインタビュー記事より抜粋

僕が『爸我回來了』を書いたときには、迷惑をかけてしまいました。みんなに彼が暴力を振るう傾向があったと思われてしまったのですが、実際は違います。
僕はただ、一人親家庭の友人たちを励ましたかった。たくさんの人に家庭内暴力という問題について注目してほしかったのです。

當時我寫《爸我回來了》,給了他一些困擾,讓大家以為他有暴力傾向,其實不是。我只是想鼓勵單親家庭的朋友,希望大家多關注家庭暴力的問題。

出典:天下雜誌第521期(2013/04/30)「周杰倫:你就是你人生的伯樂」

私がすごいなと思ったポイントは、
DVは深刻な問題として台湾社会にも存在するんですが、それをジェイ・チョウが歌という形で公で歌っていること。

↓ 以下またインタビュー記事より抜粋

自分の家人について歌詞を書くのはとても嬉しいことです。
しかも、ファンたちに「なぜジェイ・チョウは両親についての歌詞を書くんだろう?」と考えてもらうことは、彼らに考えて欲しい宿題でもあるんです。
自分が影響力を持ったなと感じた時、自分が他の人に間接的に影響を与えることができると思いました。
「ねえ、聞いてよ、お父さんとお母さんの言うこと聞きなよ」と言っても誰が聞くでしょう? 
だけど歌でなら、みんなの耳に届くんです。

所以把家人寫進歌曲,是件很開心的事。而且也會讓歌迷朋友去想,為什麼周杰倫要寫父母親,等於是給他們一個功課。當我覺得自己有影響力的時候,我可以間接去影響別人,而不是用說教的心態:「欸,我跟你說,你要孝順父母。」誰聽得進去?但你用唱的,大家耳濡目染,就聽進去了。

出典:天下雜誌第521期(2013/04/30)「周杰倫:你就是你人生的伯樂」

超ざっくり意訳(間違ってる可能性大)

戦争の後には平和が来るって聞いていたけど
どうして僕はお父さんがいつもお母さんを叩くのを見るんだろう
お酒を飲むと彼はお母さんに当たり始めるんだ
僕は本当に見ていられない
もう何も知らない少年じゃないんだ

小さい頃からお母さんだけが優しかった
どうしてお父さんはこんなに乱暴だったんだろう
もし僕に羽があったら ふたつあったら
いつでも出発できるのに
こっそり出発するんだ 僕は絶対にお母さんを連れて行く 

昔ながらの教育
よその家庭
父親がふるう暴力には原因がある
だけどね お母さんと僕は何も間違ったことなんかしていないよ
父さん 父さんただいま

もうそうやってお母さんに手をあげるのはやめて 僕の話を聞いてくれる?
もうそうやってお母さんに手をあげるのはやめて それともあなたの手は痛くないの?

僕はすべてを阻止するために戻ってきたんだ
家庭を甘い過去だったことにするために
暖かな喜びの香り 僕が作り上げたことではあるけど
少し皮肉 少し酸性
でも確かにこの社会には少しずつ幸せなものが生まれて共鳴し始めた
暴力を一切阻止しようという社会の共鳴
涙は音符とともに血となり情緒となって

小さい頃からお父さんは勉強して自分のようになれって言ってきた 嘘ばっかりなのに
お母さんはいつも言っていた「いい子ね、お父さんの話を聞きなさい」って
あなたから何を学べっていうんだ

もうそうやってお母さんに手をあげるのはやめて 僕の話を聞いてくれる?
もうそうやってお母さんに手をあげるのはやめて それともあなたの手は痛くないの?

父さん そうやってお母さんを叩いていいの どうしてそんなことするの
お酒を飲むと必ず歯止めがきかなくなってしまうんだ
何を言っても聞かないけど 聞いて
僕たちは痛みの中にいるんだ 痛いよ

ジェイ・チョウの歌がなぜこんなにたくさんの人を感動させているのか、
それはやっぱり深い苦悩を受け入れ、それと付き合う覚悟ができた人だからなのかなとも思いました。

私は彼の家庭の過去や今が実際どうだったかという誰にも分かり得るはずのないことよりも、
彼がこうして世の中に出している歌詞やインタビューというアウトプットについて
想像することで力をもらっているなと思っています。

そしてすごく早い彼のラップを歌えるようになりたいなぁ〜と
いつも思うのでした。

ちなみに後から生まれた『聽爸爸的話 Listen to Dad』という歌

「お父さんも大事です!もちろん、もちろん!」キリッ
という感じのタイミングで父の日的に出されているところがなんとも可愛くて好き。笑


以上がジェイ・チョウの歌についてでした。

ここからは私の個人的な所感ですが…

一人親家庭とかシングルマザーについて
台湾ではあんまり「かわいそう」と思われている感じがまったくしなくて
(私が鈍感なだけ?)
むしろいつも「お疲れさま」「簡単じゃないことだ」「勇敢だ」「稼いでね!」みたいな
励ましをいただくことが多いです。

ちょっと話題がそれますが、
「あなたは かわいそう」って言われて育つと、
「そうなんだ、自分ってかわいそうなんだ」と思ってしまうんじゃないかなと思っています。
「かわいそうな子」だと思って生まれて育つ子なんていなくて、
多分外部から影響を受けて初めて意識すると思うので、
ここは親である私がコントロールできる範囲内なのかと思っています。

台湾ではまず絶対、誰かが息子に「あなたはシングルマザーに育てられてかわいそうね」と言われることはないので(日本でどうなのかは分からないんですが)
いろいろあっても今のところいい環境で子育てさせていただけていると思っています。

こういう歌が堂々と歌われる台湾ってとっても素敵だなと思います、というお話でした。

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