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(ものすごく遅くなってしまいました。もう半年前のことなんです…でも、絶対に書き留めておきたいので書きます!涙目)
台湾の台中で「佔空間 Artqpie」という文化空間と、「本冊圖書館 Artqpie Library」という図書館でもあり本屋でもある空間を経営している張宗舜(Argi Chang)、通称AJという友人がいます。
友人といってもそんなに頻繁に会えていないのですが、私の中でものすごく印象深い人物です。
なにせ彼の考えていること、やっていることはとてもユニークだから。
AJは経営者であり、編集者でもあり、デザイナーでもあり…そして子育て中の父親でもあります。
そんな彼が2019年10月6日、台湾のツタヤ(TSUTAYA BOOKSTORE)でのトークイベントに、なぜか私を対談相手に指名してくれたのです。
私は本当にしゃべるのが苦手な上に中国語も下手なのですが、ほかならぬAJからのお誘いなのでALL中国語でしたが頑張ってきました。
せっかくなので、「公開取材」という形にしてみました。
このブログでは、内容の一部を書き留めてみたいと思います。
たぶん、「自分が行動する理由が、人と同じだからというのにはかなりの違和感がある」人には共感してもらえる内容なんじゃないかなと思っています。なぜなら私自身がそうだから。。
AJってどんな人?
台中在住の張宗舜(Argi Chang)こと通称AJは、
1986年生まれの台中人。
台中で文化空間「佔空間 Artqpie」と、「本冊圖書館 Artqpie Library」という名の図書館を経営。
空間のリノベーションから自分たちで実施している。
不定期で毎回テーマの違うZINEを編集・出版するとともに、グラフィックデザインやイベントの企画実施など
手がける領域はとても広く、独創性のあるクリエイションが幅広い世代から支持されている。
奥様でイラストレーターのJaneniさんと一緒に、当時まもなく2歳になる禾禾ちゃんを育児中。
(そして現在Janeniさんは二人目をご懐妊中!)
「iPhoneが発売された時、これからみんながそっちにいくと思った。だからZINE出版を始めた」
ーーこれは、書籍「TAIWAN FACE」のインタビュー取材の時にAJが言った言葉。
この書籍では16人インタビューさせてもらったけど、その中でもすごく心に残っているよ。
AJ「あのインタビューは、一時間の予定が気付いたら四時間くらい話してたよね。僕を紹介する4ページのために、こんなにていねいに作るのはすごいと思った。
僕は大学で英文科に在籍していて、母からは卒業したら先生になる道を勧められたりもしたけど、その道は選ばなかった。
スマホが出た頃からZINEを作り始めたり、無料で読書できる図書館を作ったんだ。スマホとは全く正反対の概念だよね。
結局2015年にやっとスマートフォンを使い始めたんだ。笑
書店って本を買うための【消費する】場所だけど、この空間はそもそも僕らが創作活動をする場所であって、来た人は必ずしも消費しなくていい。違う領域のいろんな人たちがこの空間に現れてくれるのが、僕にとっておもしろいことなんだ。」
ーー私はAJが作ったあのコンセプト『SMALL SCALE but BIG IMPACT』がすごく好きなんだ。
「バウハウスの教育カリキュラムの構造図『Bauhaus Curriculum』の概念で、自分のやることを表現したんだ」
『SMALL SCALE but BIG IMPACT』は本当にAJをよく表現したコンセプトだと思います。
大規模なこと、大衆的なことはやらないと決めてると話していたことがあります。
靴下ブランド「+10・テンモア」、イラストレーターの紅林、クリエイターの今晚我是手など、
AJが自分の空間で手がけるイベントはどれも大規模ではないところから出発して、それが一人ひとりの受け手に深く共鳴し、その共鳴や共感が大きな波となって結果的に社会で大きな影響力を持つようになっています。
ーー取材の時に「みんな急ぎすぎてる、もう少しゆっくり進んでもいいじゃん」って言ってたのが印象的だったけど、あれってどういう意味?
文化の創造、それは商品とかイベントみたいなものではなく、長時間かけて作られていくもので、みんながまだみたことがないようなものなのかなと思います。
本作りもそれは同じで、単純に人のものを Copy & Paste するのではなく、台湾にしかないものがきっとあるから、それを考えることが大切なのかなと。
出典:書籍「TAIWAN FACE」でAJが語った言葉より一部を抜粋
「僕は植物が好きなんだけど、それは育つのが遅いから。仕事はスピーディにやりたいけど。
周りの人からも、いつも何やってるか分からないとか、どうやって生きてるのって言われるよ。
店も午後15時にやっとオープンするしね。
台中って午後になるまでみんな出かけないんだよね。だからそれまでは創作活動をしたり、植物の世話をしたりするんだ。」
雑誌『Pen』台湾特集で台中の案内人に
ーー取材では会わなかったけど、私もAJも雑誌『Pen』台湾特集の制作に関わったんだよね。
AJは台中の案内人として、どどーんと登場していたよね。
「そうそう。
2019年4月には東京の蔦屋書店でトークイベントに登壇させてもらったり、
なんだか台中よりも日本で有名になってしまった感があるよ。笑
アンディ・ウォーホルも言ってたけど、誰もが15分間は有名になれる時代だね。
(*近藤補足:「将来、誰でも15分間は世界的な有名人になれるだろう」というアンディ・ウォーホルの有名な言葉)
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日本には情報が深い雑誌がたくさんあるけど、この雑誌もそのひとつ。
今や台中に来たらみんな宮原眼科へ行くけど、歴史があって素敵な場所は他にもたくさんあるから、そういうのを知ってもらえたらうれしいよ。」
余談ですが、AJが奥さんと毎年作っている活版印刷のカレンダーはとても素敵。
いつも、台湾や台中のことが素敵なイラストとテキストで紹介されています。
クリエイターにとっての「子育てと仕事のバランス」
ーー今回は子育てについてもちょっと話したいと言ってくれたんだよね。
AJはイラストレーターで奥様のJaneniさんと一緒に、自分たちで禾禾ちゃんの面倒をみながら仕事してるんだよね?
禾禾ちゃん、取材した時は9カ月だったけど、もうすぐ2歳になるんだね!(*当時)
「子どもができる前と今とでは全然変わったからとてもおもしろいと思って。
家のインテリアだって前みたいにできないし、
前はデザイン系の雑誌で一冊2〜3000千元(日本円で1〜2万円)するような本を買っていたけれど、今ではそれより高いデザインされたおもちゃを買っている自分がいる。
大学生の頃にはお金がなくてデザイン系の高い本を買えなかったから、いつも誠品書店で本を開けてもらっていたんだよね。
(*近藤補足:誠品書店など台湾の書店では、一般的に一部の本はビニール包装されていて、中身を見たい場合はカウンターで頼むと封を開けてもらえる。でも面倒だし、何より気まずいのです。)
でもこういう本を読む場所がないと台湾の文化水準は上がっていかない。
台湾も少しずつ転換してきているよ。日本の影響も大きい。
子どもが生まれる前の仕事のやり方は、今はできなくなってしまったから、これからどうやっていくかはまだ模索中だよ。
今は安定してくれたけど、うちの子は生まれつき心臓がすごく弱くて、しばらくはとても大変だった。
でも、止まっているように見えて新しいことが始まっているんだよね。植物と同じで、葉が落ちて実がなるように。
普通のデザイナーはクライアントのOEMみたいに仕事をするけど、僕は自分の創作もしたい。
自分自身を経営しなければならないんだ。
子供が3歳になるまでは自分で面倒をみたいし、それは全部自分の中での理想なんだけど…。
「佔空間 Artqpie」という空間が定義できていないのはその理由があるかな。
デザイナーは有名になってナンボみたいなのがあるけど、僕はそうは思わない。
本や作品がたくさん売れたとか、空間にたくさん人が来てくれたからいいというわけではないんだ。
今の台湾とは逆を行ってるけど。」
ーーすごくいいと思うけどなぁ。難しいけれど。
「子どもがいなかった頃は、しょっちゅう仕事仲間たちと朝まで寝ずに話し合ったりしていた。
空間で何をするか、どんな本を置くか、誰とコラボレーションするか…話題は尽きなかったよ。
商業施設でイベントするにも、搬入って夜22時からだからね、子どもがいたら無理だ。
最初は仕事が思い通りにできなくて、「どうしてこうなんだ?」って思ってた。
もうすっかり慣れて、今は違う心理状態でいる。
まるで「daddy」っていう事業がひとつ増えたみたいだ。」
ーー仕事と子育てのバランスは難しいよね。でもAJは私の中ではかなり子育てに積極的に参加しているお父さんだよ。
「子どものいるクリエイターがどうやって過ごしているかというテーマで本を作ってみたいんだよね。
どうやって両立するかとか、稼ぐのかとかそういうのじゃなくて、ただその様子が知りたい。
僕は大学を卒業する時に、会社勤めはしないって決めたんだ。
会社勤めをせずにどうやって生きていくかをいつも考えている。
とても影響を受けた人の一人に、日本人がいるよ。
東京の荻窪で「6次元」という空間をやっているナカムラクニオさん。
「6次元」は本当にすごい空間で、僕もあんな人になりたい、台中であんな空間を作りたいと思っている。」
ーー私が東京に住んでいた頃、「6次元」は大好きな場所だったよ! ここも繋がっていたんだね。本当に世界は狭いなぁ。
いつも人と違う自分なりのやり方を考えるAJ
今回、台湾人参加者の皆さんの前に
「この人だれ?」状態で登壇した私を、AJはこう紹介してくれました。
「台湾のトークイベントって、同業者を呼んで対談形式にすることが多いんだ。
僕だったらデザイナーとか、イベントのキュレーターとかね。
だけど僕が今回近藤さんを呼んだのにはちゃんと理由がある。
近藤さんのライターとかコーディネーターっていう仕事は、台湾人が自分たちでは何とも思っていない生活の何かを超絶おもしろいトピックとして発見できる。
僕は“台中ってそんなにおもしろいところある?”って思ってたけど、日本語のコンテンツにしてもらった時におもしろいと思えた。(日本語は読めないから、Google翻訳で読んでるよ。)
僕は英文科でたくさんの翻訳をしてきた。でもこのライターとかコーディネーターっていう仕事は翻訳とはまた違った、興味深い仕事だと思う。時には司会者のようなスキルも必要になるしね。
だから今日話してみたいと思ったんだ。」
そんな紹介をしてくれて嬉しかったことはもちろんだけど、「この人は本当に思想が独創的で、好きだなぁ」と思ったのでした。
『SMALL SCALE but BIG IMPACT』ーー今でも、ふとした時に思い出しています。
機会があったら、台中にあるAJのお店にもぜひ。
「佔空間 Artqpie」&「本冊圖書館 Artqpie Library」
https://www.facebook.com/ArtQPie/
住所:台中市西區中美街135號
電話:0982-723-359
営業時間:水〜土15:00〜20:00、日〜18:00
AJについて知りたいと思ってくださったら、ぜひこちらの本のインタビューもご参考くださいね:)
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