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東京在住の超人気台湾人ブロガー・明太子さんとはじめた交換日記、第六回目!
今回はちょっと特別編で、拙著『オードリー・タンの思考 IQよりも大切なこと』を読んだ明太子さんが、私を取材してくれました。
🔗明太子小姐寫的中文版在這裡(中国語版はこちらから)
https://www.mtkomtko.com/inspirations/明太子-x-yaeko日台女生交換日記vol-6-audreytang/
- 1 明太子さんによる、取材がスタート!
- 2 1. 本を書いたきっかけは? どうしてオードリーさんと出会ったの?
- 3 2. Yaekoさんの心の中で、オードリーさんはどんな人物?
- 4 3. オードリーさんを取材していて、いちばん心に残っているのは?
- 5 4. 本の中で、いちばん印象に残っている部分はどこ?
- 6 5. この本を制作するにあたって、いちばん難しかったのは?
- 7 6. Yaekoさんは「日本人と台湾人では、EQに対する考え方が違う」って書いていたけど、どう違うの?
- 8 7. 一人の母親として、オードリーさんの生い立ちについて知った後、自分の子育てについて何か影響はあった?
- 9 8. 「一人一人の心の中に小さなオードリー・タンを」って、どういう意味?
- 10 9. この本を出版したことは、Yaekoさんにとってどんな意義があった?
- 11 10. Yaekoさんにとって、台湾と日本の幼稚園や小学校の教育、いちばん違うのはどんなところだと思う?
- 12 気になる明太子さんの感想は?
明太子さんによる、取材がスタート!
今回の交換日記は、私がYaekoさんを取材します!彼女はつい最近『オードリー・タンの思考 IQよりも大切なこと』という本を出版して、日本でもとっても好評なんです。2021年2月に出版されて、わずか1ヶ月でもう3刷なんですよ! すごすぎます! Yaekoさんおめでとう!
昨年、新型コロナウイルス感染症が出始めた頃から、オードリーさんは日本メディアで非常に注目されていましたが、いちばんはじめにオードリーさんのことを台湾から日本に伝えたのはYaekoさんなんですよ!
なぜYaekoさんがオードリーさんと出会ったのか? この本を出版したきっかけは何だったのか? 私と一緒に彼女に聞いてみましょう。
1. 本を書いたきっかけは? どうしてオードリーさんと出会ったの?
いちばん最初にオードリーさんにお会いしたのは、コロナ前の2019年10月に行ったYahoo!ニュース特集のインタビューです。
記事『「国民が参加するからこそ、政治は前に進める」――38歳の台湾「デジタル大臣」オードリー・タンに聞く』は2019年12月12日に公開され、瞬く間に多くの方に読まれ、日本のYahoo!のトップページに掲載されるほどになりました。
その直後にコロナで世界中が防疫に苦戦する中、台湾は初動の抑え込みに成功しましたよね。
日本のメディアから「そこでオードリーさんは何をしたのか?」という取材が私のところに殺到し、「マスクマップ」や「ユーモアのあるフェイクニュース対策」を紹介したら、「日本には絶対にない!」「台湾がうらやましい!」と人気に火がついていきました。
そんな中で出版社から依頼があって、オードリーさんについての評伝を執筆することになり、インタビュー取材を申し込んで、トータルで20時間くらい取材させていただきました。
2. Yaekoさんの心の中で、オードリーさんはどんな人物?
台湾人の友人たちから、もう何回も「なぜ日本人はこんなにオードリー・タンが好きなの?」と聞かれています。
日本のメディアから執筆や取材の依頼をいただくたびに、「オードリーさんのどういう面を取材したいですか?」と聞くんですが、ダントツで多いのは「オードリーさんの“誰も置き去りにしない社会を作る”」という姿勢について、どうしてそう思うようになったのかや、それをどのように実行しているのかといった点です。
日本の大臣を取材しようとしても、まずは「記者クラブ」という組織に入れてもらえないと記者会見のような場に行けないし、大臣のインタビューなんて、人脈がないと滅多に取材することはできません。私のようなライターは、たぶん一生お目にかかることはないでしょう。一方でオードリーさんは、取材どころか週に一度、予約制で誰でも会いに行けるオープンオフィスをされています。これは大きな違いですよね。苦笑
私が思うのは、「日本にはオードリーさんのようなオープンで“誰も置き去りにしない社会を作る”なんていう考えを持った政治家がいないから、オードリーさんの考えを知れば知るほど目からウロコでファンになってしまう」と同時に、「日本政府は、オードリーさんのような人を政治家にできるような環境ではない」から、「オードリーさんのような素晴らしい方が政府にいてくれる、台湾がうらやましい」んだと思います。
3. オードリーさんを取材していて、いちばん心に残っているのは?
一秒一秒が涙が出るほど新しい学びに満ちていて、忘れられない時間です。どれもが日本が学べることばかりで、「私はここで得た学びを、日本にしっかり伝えられるだろうか、いや、伝えなければ」と、自分で自分を奮い立たせていました。
例えば、オードリーさんが「課綱微調」がきっかけで、“素養當作DNA”の「108課綱」を作る委員会に参加した時のお話をしてくださった時もとても印象的です。
その時のことがあったから、オードリーさんには専属の逐字稿寫著が付いていて、彼女は今オードリーさんだけでなく行政院のさまざまな会議で逐字稿を書いているんです。
この本を書くにあたっては「ひまわり学生運動」も、「課綱微調」も、戒厳令も、白色テロも、すべてが今の台湾に繋がっていることを強く感じて、私は自分が何も知らないことが本当に恥ずかしくて、同時にしっかり学んでいかなければならないと思いました。
4. 本の中で、いちばん印象に残っている部分はどこ?
どれも100,000字くらい書けるくらい思い入れがあります。
5. この本を制作するにあたって、いちばん難しかったのは?
ある読者さんから、「読めば読むほどオードリー・タンの話ではなくなってくる」と言っていただいたんですね。
本当にそうで、私はコロナの抑え込みも、「台湾はオードリーさん一人がやったわけではない」ことを伝えたいし、「天才大臣」というキャッチコピーでオードリーさんが紹介されるのにはかなりの違和感があるんです。
そこを崩して、「社会を良くすることを、一人の天才に任せようとするんじゃなくて、まずはあなたが小さなオードリー・タンになるくらいのつもりでいてほしい!」というのがこの本のコンセプトであり、最大の挑戦でした。
6. Yaekoさんは「日本人と台湾人では、EQに対する考え方が違う」って書いていたけど、どう違うの?
台湾で暮らしていると、IQの高さよりもEQ(Emotional Intelligence Quotient、心の知能指数)を大切にするという文化があるように感じます。
一般的に人を褒める時などに「あの人はEQが高い」などというように使われていますよね? メディアや大衆からの心ない言葉にタレントがEQの高い対応で返すと、好感度が一気に上がるように思います。
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EQが重視されるのはタレントや著名人だけではなく、一般的な職場でも、たとえば人前で部下を叱るような上司は「EQが低い」とみなされて尊敬されないようです。メンツを大事にする台湾人にとって、どれだけその人が落ち度のあるミスをしたとしても、人前で叱って部下のメンツを潰すような上司は、「自分の感情をコントロールできない人間」だと思われると聞いたことがあります。どんなにIQが高くても、EQが高くなければ尊敬されないと(明太子さんはどう思いますか?)。
EQが今の日本にも大切なことだと思った私は、これまでも日本のメディアに向けて台湾のEQを重視する文化について書きたいと何度も提案してきましたが、「日本ではなじみがない」と採用されることはありませんでした。だからこそ私は日本語で今回の本を執筆するにあたって、オードリーさんを通してこのEQが大切だという文化を伝えたいと思ったんです。
7. 一人の母親として、オードリーさんの生い立ちについて知った後、自分の子育てについて何か影響はあった?
オードリーさんの成長故事についてお母様が書かれた『成長戦争』を読んだ時には、もう涙が止まりませんでした。あの本は絶版になっているので、私はなんとか図書館で借りて読んだのですが、10日後にはもうオードリーさんの取材が迫っているので、早く読まなければならず、急いで集中して読みました。
一人の人間としても、二児の母としても、オードリーさんを取材する書き手として、どの立場で読んでもたくさんの学びや気付きがある本です。
でも私の育児に対する考え方でいちばん影響を与えたとしたら、そうですね。
「誰かに自分の感じたことを肯定してもらうのは、とても大切なことです。人間の感情とはとても複雑で、すべてを言葉にして話したり書いたりすることは難しいからです。だからこの頃の私は、どんな経験をしてどんなことを感じたのかということを、うまく言葉にできなかったり、表現できなかったとしても、ただ、あなたがそう感じたことは、本当のことだ』と言ってくれる人が必要でした。感じたことを否定されないことでこそ、私の感受性は少しずつバランスを取り戻すことができました。もしずっと否定されていたら、私は外の世界とコミュニケーションが取れなくなってしまっていたでしょう」
「だから、母親が私の感情を肯定しようとしてくれたことは、とても素晴らしいことでした」
この言葉をオードリーさんから聞いたことでしょうか。
この言葉を聞いたその日から、私は息子たち(できれば旦那さんも含めて)の感じたことをできるだけ肯定しようと決めました。
8. 「一人一人の心の中に小さなオードリー・タンを」って、どういう意味?
オードリーさんの人気が高まる今の日本では、「オードリーさんのような大臣がいる台湾がうらやましい」「オードリーさんに日本に来てほしい」という声が数多く上がっています。
もちろん来ていただけるのは嬉しいことですが、仮に今の日本にオードリーさんが行ったとして、日本社会や政府の中で、オードリーさんは台湾と同じように活躍できるでしょうか。私にはとてもそうは思えません。
だからこそ、まずは日本の社会を、オードリーさんのような考え方や行動ができる人をたくさん増やすことで、結果的に社会が少し変わるのではないかと思ったのです。
本を読んだ人が「小唐鳳」になっていく。そんな「小唐鳳」が日本の社会に増えたら、それだけで日本はかなり未来に希望が持てる気がしました。
9. この本を出版したことは、Yaekoさんにとってどんな意義があった?
今、私のもとにはたくさんの感想が届いています。そしてみんなが「小唐鳳になるために、自分はXXをしてみます」と言ってくれるんです。「読書会をして、この本についてみんなで語り合ってみます」というご連絡ももう何件もいただきました。
それはすごく嬉しいことだし、オードリーさんやその周りの方、この本作りに関わった全ての方に少しでも恩が返せた気がして、ほっとします。
10. Yaekoさんにとって、台湾と日本の幼稚園や小学校の教育、いちばん違うのはどんなところだと思う?
そうですね。
私は過去に六年間ほど台湾のデジタルマーケティング企業に勤務していたことがあります。
台湾の最高学府である台湾大学の卒業生など優秀な若者たちが続々入社してくるんですが、一度「企画を立てろと言われても、方向性がないとどうしていいか分からない」と相談されたことがあります。彼らは「苦手であまり好きではない」と言っていたんですね。
日本の教育を受けて育った私にしてみれば、企画って最も楽しいものであるはずなのにどうしたんだろう、あれだけ優秀なスタッフの立てた企画を見てみたいのに残念だな、と思いました。なんといっても、彼らは私が何日間も必死で勉強して臨むようなデジタル系の資格試験に、数時間の勉強で楽々一発合格するほど優秀なんですよ。
でも、その後、長男の授業参観で現地小学校に行った時、少しだけその理由が垣間見えた気がしました。
工作の授業で先生が完成見本を見せて、その通りに作らなければならないんです。長男は木の葉っぱの色が違うからとやり直しさせられていました。そして、先生の見本と全く同じように完成させた生徒がほめられていました。それを見た時に、「こんな教育を受けていたら、実行能力は高くなるけれど、何を実行するかを自分で考える能力は、閉ざされてしまう」と感じました。
少し前までの台湾は、実行能力の高い人材を排出することに長けていたのでしょう。けれど、この新しい「素養教育」を受ける世代は、過去とは全く違った環境で育つことになります。そしてその世代が、新しい社会を築いていく。
台湾の教育現場は、少しずつ、でも着実に、その姿を変えていくことでしょう。
気になる明太子さんの感想は?
日本に住んでいる明太子さん。果たして拙著を読んで、どんな風に感じているのか気になりすぎます。さっそく聞いてみましょう。
旦那さんと一緒にとっても感動しながら読みましたよ!
(すでに読み終えて、日本に住んでいる台湾人の友達に貸しました♡)
Yaekoさんの言葉を通して、新しい発見がたくさんありました。
たとえば「EQへの態度」も、確かに台湾と日本では大きく違いますね。でも、これまでこのことをシェアしている人は少なかったですし、私も言われなかったら気付きませんでした。笑
読んでいて「おおお!そうだったのか!」と驚きました。
いちばんびっくりして、印象深かかったのは、あれですね。本の中でYaekoさんが言っていた「もしオードリー・タンが日本に来たとしても、彼女が台湾と同じように活躍できる舞台があるだろうか」っていうところです。
そう思いますよ! 実際、彼女が政府に入閣した時には、私もとても驚いたんです。
今の日本政府には慎み深さといった優れた点がありますが、日本の政府にも新しいタイプの方が入ったら、新しい考え方が加わることだって期待できるかもしれませんよね。
だから、Yaekoさんが言っていた「一人一人の心に小さなオードリー・タンを」っていうコンセプト、本当にすごく良いと思いますよ。
Yaekoさんは本を読んだ日本の方たちが、「自分の中に小さなオードリー・タンを宿すために」少しずつアクションを起こし始めているって言っていたけど、実際私も少しずつ自分を変えたいと思うようになりました。この本はきっとみんなにたくさんのインスピレーションを与えているんじゃないかなと思います。
みんなも変わりたくないんじゃなくて、自分の何をどう変えたら良いのか分からなかったりしますものね。
(明太子さんの言葉って、優しいけど、本質を突いているからファンが多いんだろうな…)
毎回しみじみ思うのは、こうして明太子さんとの日本と台湾のソフト面について話し合うことで、新たな発見があったり、自分がぼんやりと思っていたことの輪郭がくっきりしてきて、また自分がもっと深堀りしてみたいと思うような方角が見つかることが、自分にとってかけがえのない体験だということ。
明太子さん、忙しい中で本を読んでくれて、そしてこうして記事にまでしてくれて、本当にありがとう〜〜!!
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