中央山脈の麓、谷關へ。台湾「星のやグーグァン」宿泊記

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誰もが驚いた、星野リゾートが「谷關(グーグァン)」に開業?

コロナ禍直前の2019年6月、台湾の台中からさらに車で90分ほどの山奥にある温泉地「谷關(グーグァン)」に、星野リゾートのラグジュアリーホテル「星のや」が開業しました。

提供:星のやグーグァン(虹夕諾雅 谷關)
提供:星のやグーグァン(虹夕諾雅 谷關)

オープン当時、誰もが一度は「谷關(グーグァン)に、星野リゾート?」と聞き直すくらい衝撃的だったのをよく覚えています。

星野リゾート自体、台湾では人気・知名度ともに非常に高く、訪日インバウンド業界でも“その存在は別格”という感じなので、台湾で開業するというのはごく自然なことのようにも感じますが、その場所が意外にも「谷關(グーグァン)」というのですから、一体どんな感じなのだろう?と、期待で胸が高鳴ったのでした。

余談ですがオープン当時、ちょうど雑誌『Pen』と『FIGARO』で台湾特集を制作していて(私もコーディネートや取材で関わらせていただいていた)、誌面でも「星のやグーグァン」が紹介され、宿泊券の読者プレゼントが実施されたところ、ものすごい人気だったと小耳に挟みました。注目度の高さが窺い知れますよね。

星のやグーグァン 外観
提供:星のやグーグァン(虹夕諾雅 谷關)

実はコロナ禍で海外旅行に行けない日々が続いたこの二年半の間に、我が家も何度か家族旅行で訪れようとしていたのですが、台湾人も全く同じことを考えていたようで、なかなか予約が取れなかったのでした。

そしてコロナも終息し始めたこのタイミングで、偶然にもご招待いただき、我らが青木由香さんと二人、大人だけの一泊二日ステイが実現することに!
帰ってきたばかりでまだ夢から覚めていないような今、この気持ちを忘れないように宿泊記を書いておこう!と、パソコンを開きました。

青木由香さんと、大人の一泊二日旅で「温活」

「星のやグーグァン」では、通常の宿泊以外にも、春夏と秋冬にそれぞれ提案型の滞在プログラムを出されているそうで、私たちは今年の秋冬に展開される、温泉養生による「温活」で免疫力の向上を目指すことをテーマにした「暖活益身(あったかいーさん)滞在」を体験させていただきました。

簡単ですが、以下に青木由香さんと行く「星のやグーグァン」宿泊レポートをお届けします!

台北から台中まで、高鐵(高速鉄道、新幹線的な存在)でおよそ1時間。
宿が手配してくださった送迎タクシーで、台中の街中から山奥まで、およそ90分ほどで到着します。

宿が提携しているタクシーは、片道3,150元(大型車4,410元)という感じだそうです。

台中在住だというタクシーの運転手さんに「谷關に温泉入りに来たことはありますか?」と聞いたら、「(無料で開放されている)足湯に浸かったことはある」ということでしたから、温泉地としてはやはり親しまれているのでしょう。私も足湯に浸かりたい。

さすがは台中、湿気が高くてじめじめした台北とは違ってカラッとしたちょうど良い晴天に、心が浮き立ちます。

青々と風にそよぐ竹林が見えてきました。谷關の奥、高台に位置するのが本日のお宿、「星のやグーグァン」です。

青々と風にそよぐ竹林が見えてきました。谷關の奥、高台に位置するのが本日のお宿、「星のやグーグァン」です。

青々と風にそよぐ竹林が見えてきました。谷關の奥、高台に位置するのが本日のお宿、「星のやグーグァン」です。

谷關は「參山国家風景区」と呼ばれる国指定の景勝地内にあります。

台湾全土を南北に走る、最も長い山脈「中央山脈」の3,000メートル級の山々がすぐそこに迫る景色は絶景です。

提供:星のやグーグァン(虹夕諾雅 谷關)
提供:星のやグーグァン(虹夕諾雅 谷關)

エントランスには内海聖史さんによる絵画「Overhead color 頭上の色彩」が。台北にはなかなか無い、この天井の高さ! 

エントランスには内海聖史さんによる絵画「Overhead color 頭上の色彩」が

酒井祐二さんによる「The Winding River 蛇行する川」と、成瀬好徳さんが温泉の湯面から舞い上がっていく湯気をイメージしたというスズ合金で作られた作品「soar」。
酒井祐二さんによる「The Winding River 蛇行する川」と、成瀬好徳さんが温泉の湯面から舞い上がっていく湯気をイメージしたというスズ合金で作られた作品「soar」。

館内にはほかにもさまざまな藝術品が飾られていて、目を楽しませてくれます。

「星のやグーグァン」のお庭
お庭を前にすると、心が静まっていくのを感じます。
「星のやグーグァン」のプール
プール。11月末でしたが、お天気が良かったからか、入っているゲストがいらっしゃいました。気持ちよさそう!
「星のやグーグァン」台湾・台中出身の陶芸家/アーティスト、吳偉丞さんの作品。
台湾・台中出身の陶芸家/アーティスト、吳偉丞さんの作品。

チェックインを済ませたら、まず体験するのは「風と森の体操」

「星のやグーグァン」の特等席ともいえる「風の間(客室棟の4階)」で、山々をすぐそばに感じながら体幹を鍛える優しい体操を行います。
風の間で、山々をすぐそばに感じながら体幹を鍛える優しい体操

疲れるとはほど遠い、ストレッチ的な体操でしたので、運動不足マックスの私でも楽しく行うことができました。

お部屋へ

今回、私たちが宿泊したのは、「風音」というメゾネットタイプの3人部屋。

「星のやグーグァン」メゾネットタイプの3人部屋

リビングは掘りごたつ的な構造になっています。

「星のやグーグァン」メゾネットタイプの3人部屋

2階部分は客室専用の温泉風呂(半露天!)と、お化粧台(二人で同時に使えるタイプ!)。
「星のやグーグァン」部屋には源泉掛け流しの半露天

「星のやグーグァン」メゾネットタイプの3人部屋

源泉掛け流しの客室温泉は、窓を開ければ半露天にすることができます。

ネット情報のためあくまで参考程度ですが、谷關温泉は1907年頃に原住民によって発見されたのが始まりとされ、1927年頃に公衆浴場が造られたそうです。日本統治時代には台湾中部の三大温泉のひとつとして、日本人から「明治温泉」と呼ばれたこともあるのだそう。

「星のや」がここ谷關に開業するきっかけになったのも、この谷關温泉の泉質の良さと、豊富な湯量が決め手のひとつだったのだそうで、確かに湯量が豊富でしたし、弱アルカリ性の炭酸水素塩泉の「美肌の湯」と呼ばれるお湯のおかげで、お肌がすべすべになりました。

さらに今回体験させていただいた「暖活益身(あったかいーさん)滞在プログラム」では、台湾の生薬やスパイスを自分で組み合わせて入浴剤にできる「草根木皮(そうこんもくひ)の湯」を体験できます。
台湾の生薬やスパイスを自分で組み合わせて入浴剤にできる「草根木皮(そうこんもくひ)の湯」

使用する素材は、菖蒲(しょうぶ)、乳香(にゅうこう)、薄荷(はっか)、ヨモギ、カッコウ、ソウジュツ、フジバカマ。自分で好きなだけ袋に入れて入浴剤にします。
私は入浴直前に入れてみましたが、源泉掛け流しでどんどんお湯は入れ替わっていきますし、そんなにすぐにエキスが出てくるわけでもないので、これはチェックイン時に入れて、1〜2時間おいた方が良さそうだと思います。

「星のやグーグァン」夕方から夜への移り変わりが美しい
日が暮れて夜に移り変わっていく様子がお部屋からも眺められて最高です。

ディナーは和牛すき焼き。しかも、新感覚!

さて、お楽しみのディナータイム!

“温活”がテーマということで、ディナーのメニューに選ばれたのは、和牛すき焼き。たんぱく質と鉄分豊富な牛肉に、キノコや大根、生姜などをふんだんに使って作られるすき焼きは、さすが星のやさん、日本そのままのお味で、スタッフさんがつきっきりで調理してくださり、子育て中の身としては、人様に作っていただくご飯のありがたさに涙が出そうでした。

「星のやグーグァン」レストランでディナー
スタッフさんがつきっきりですき焼きをサーブしてくださいます。
「星のやグーグァン」レストランでディナー
和牛すき焼き! 野菜たっぷりで嬉しかったです。白キクラゲなど、台湾らしい食材も。

さらに感激したのが、台湾ならではのスパイスを薬味に使うこと!
おなじみ「馬告(マーガオ)」だけでなく、「刺蔥(ツーツォン)」、紅胡椒、カルダモン、山椒などのスパイスを自分で選び、すり潰して薬味として使います。

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「馬告(マーガオ)」、「刺蔥(ツーツォン)」、紅胡椒、カルダモン、山椒などのスパイスを合わせて楽しみます。
「馬告(マーガオ)」、「刺蔥(ツーツォン)」、紅胡椒、カルダモン、山椒などのスパイスを合わせて楽しみます。

青木さんも私も、この「刺蔥(ツーツォン)」にどハマりしました。日本の山椒に似た感じですが、それともまたちょっと違います。馬告とともに、この谷關の原住民の間でよく使われる伝統食材とのことです。

「星のやグーグァン」すき焼きディナー
すき焼きに台湾スパイス、すごくマッチして新感覚でした。自宅でも真似したいです!

新感覚のすき焼きを考案されたのは、今年来台されたという加川仁料理長。滞在中にローカルのスタッフさんたちから「料理長のことを尊敬しています」の声を何度もお聞きしました。

「星のやグーグァン」加川仁料理長。
「星のやグーグァン」加川仁料理長。

(ワインリストに、先日それこそ青木さんと農園に行ったばかりの台湾産ワイン、「威石東 Weightstone」のワインが! 惜しくもちょうど在庫切れとのことで、他のワインをいただきました。「威石東 Weightstone」についてはまた別途ブログを書きたいと思います。)

お部屋に戻って、お風呂タイム。
満点の星空を見上げ、月の光を浴びながら部屋の温泉に浸かり、谷關の夜は更けていきます。

「星のやグーグァン」部屋の半露天
部屋付きの温泉は、窓を開ければ半露天になります。

一夜明けて、お部屋で朝食!

今回の滞在プログラムでは、お部屋出しの朝食をいただくことができます。

「星のやグーグァン」部屋出し朝食

ここでも温活がテーマということで、生姜やクコの実などを使ったお茶漬けをいただくのですが、お茶漬けに使う出汁が「十全大補湯」という漢方スープをアレンジしたものだったのが面白かったです。

朝食前、静けさを狙って大浴場に行ってみたところ、一人、また一人と台湾の方も朝風呂に来られていたのが印象的でした。

温泉や大衆浴場に対する感覚が日本とは違う台湾ですが、日本式の温泉文化を知る人が、ここ台湾でも増えているということでしょうか。朝靄のなか、大自然をすぐそばに感じながら、静かに湯浴みするという楽しみを、台湾の、しかも谷關という地で堪能することができるなんて…。

「星のやグーグァン」竹の緑が目に眩しく、水音に癒される通り廊下
「星のやグーグァン」竹の緑が目に眩しく、水音に癒される通り廊下。
「星のやグーグァン」館内のお休み処で擂茶がふるまわれていました。
「星のやグーグァン」館内のお休み処で擂茶がふるまわれていました。

「水の庭園」の「草花散策ツアー」

「星のやグーグァン」の、シグニチャーのひとつ、お庭(勝手に私が思っているだけですが)。
聞けば4人の庭師さんが手入れをされているそうで、この地に原生する植物をそのまま残しているそうで、本当に素晴らしいんです。

「星のやグーグァン」水の庭園
お庭の名前は「水の庭園」

そのお庭をスタッフさんが案内してくださるのが、「草花散策」という30分程度のツアー。天候にもよりますが、基本的に毎朝実施されており、無料・予約不要なのでとてもおすすめです。

「星のやグーグァン」水の庭園を散策

「星のやグーグァン」水の庭園を散策

お庭には本当にたくさんの植物(+虫や魚たち)が生息しているので、一度自分自身でお庭を巡ってみてからツアーに参加すると、より理解が深まるのではないでしょうか。

「星のやグーグァン」水の庭園を散策

「星のやグーグァン」水の庭園を散策

「星のやグーグァン」水の庭園を散策

原住民の間で「この花が咲くと翌日は雨が降る」と言われている花なんかもありました。写真を撮りそびれてしまったので、また次回。

微景森林

お庭のツアー「草花散策」の後は、そのまま続けて「微景森林」というプログラムにも参加してみました。こちらは要予約・一人700元と有料ですが、とっても良い体験でしたよ。

「星のやグーグァン」お庭にある植物でビオトープを作る体験

このお庭にある植物を使って、小さな鉢の中でビオトープを作る体験です。

「星のやグーグァン」お庭にある植物でビオトープを作る体験

「星のやグーグァン」お庭にある植物でビオトープを作る体験

「星のやグーグァン」お庭にある植物でビオトープを作る体験

先ほど説明を受けたばかりのお庭の植物たちを、思い思いに配置する土いじり。谷關の思い出をそのまま自宅に持ち帰ることができて、素晴らしいアイディアだなと思いました。

「星のやグーグァン」お庭にある植物でビオトープを作る体験
我らが青木由香さんは、プロ級の作品を完成されていましたよ〜
「星のやグーグァン」お庭にある植物でビオトープを作る体験
※こちらは素人である私が作ったものです。笑

チェックアウト後に昼食

名残惜しいのですが、チェックアウトの時間になってしまいました。

チェックアウト後には、レストランでランチをいただきました。レストランは、「星のやグーグァン」の大きな特徴のひとつであるお庭の目の前にあり、一日の中でも時間帯によって全く違う表情を見せてくれます。

「星のやグーグァン」レストラン

台湾らしく牛肉麺をセレクトしてみました。すっきり上品なスープが、優しいお味でとっても美味しかったです。愛玉ゼリーが添えられているのも素敵!

「星のやグーグァン」レストランでランチ

お宿を発つ前に「台湾茶」を体験

最後の最後に体験したのは、「台湾スパイスティー茶房」という体験でした。

「星のやグーグァン」お庭を目の前に3種類の台湾茶をいただきました

なんと、お庭を目の前に3種類の台湾茶をいただけるという、それだけで贅沢な時間なのですが、「温活」がテーマということで、谷關で暮らす原住民の間で親しまれている「馬告(マーガオ)」、「刺蔥(ツーツォン)」、シナモン、クミン、カルダモン、山椒の6種類のスパイスを加えて楽しむという提案です。

「星のやグーグァン」お庭を目の前に3種類の台湾茶をいただきました

お茶は、このエリアが産地である「東方美人茶」、「松柏長青茶(ソンプォチャンチンチャ)」、「紅韻(ホンユン)紅茶」の3種類。
「星のやグーグァン」お庭を目の前に3種類の台湾茶をいただきました

「星のやグーグァン」お庭を目の前に3種類の台湾茶をいただきました

お茶の達人である青木さんと、3種類のお茶やスパイスをたっぷり堪能しました。
「星のやグーグァン」お庭を目の前に3種類の台湾茶をいただきました

今回の旅では、台湾スパイスのさらなる楽しみ方をたくさん知ることができたし、「刺蔥(ツーツォン)」に開眼した気がします。

お庭には「刺蔥(ツーツォン)」が生えていて、スタッフさんが実際に見せてくれました!

「星のやグーグァン」とても親切なスタッフさんたち。お庭の植物にもとても詳しかったです。
「星のやグーグァン」とても親切なスタッフさんたち。お庭の植物にもとても詳しかったです。

おわりに

台湾の中でも「谷關」という特別な場所と、日本の温泉や美食、おもてなし(「星野リゾート」というのも一つの文化ですよね)や建築などといった文化の融合という、他のどこにもない価値がある場所、それが「星のやグーグァン」だなと感じました。

どこにもないからこそ、「どうあるべきか」を模索することになる。だからこそきっとこれから先も「星のやグーグァン」のあり方は変わっていくのでしょうし、私自身もいつも「どうあるべきか」を模索しているからこそ、「星のやグーグァン」の在り方にはすごく刺激を受けました。

日本からのご旅行でいらっしゃる方、台湾に住まれている方はもちろんのこと、台湾に以前住まわれていた方にも、こんな台湾の解釈があるのだと、体験していただけたらなと思う、「星のやグーグァン」でした。

「星のやグーグァン」基本情報

  • 住所:台中市和平区博愛里東關路一段温泉巷16號
  • 電話番号:0570-073-066(総合予約)
  • 客室数 :49室(全室半露天風呂付)・チェックイン:15:00/チェックアウト:12:00
  • 料金 :1泊 20,000台湾ドル〜(1室あたり、税込・サービス料別、食事別)
  • 台北からのアクセス:「台北駅」より高速鉄道で「台中駅」下車(便にもよりますが、1時間程度)→車で1時間30分程度
  • オフィシャルサイト:https://hoshinoya.com/guguan/

自然の中で免疫力を高める「暖活益身(あったかいーさん)滞在プログラム」

  • 期間:2022年10月1日〜2023年3月31日
    (除外日:2022年12月28日〜23年1月5日、1月20日〜26日)
  • 料金:1人18,370元(税込・サービス料別)、宿泊料別
  • 含まれるもの:ウェルカムスイーツ、草根木皮の湯、風と森の体操、台湾スパイスティー茶房、温活朝食、温活・和牛すき焼き
    ※こちらは2泊3日のプログラムですが、私たちは今回簡易版を体験させていただいております。
  • プラン詳細・予約:公式サイトのプラン詳細ページをご参照ください。7日前まで受付
  • 定員:1日1組(2名限定)
  • 対象:星のやグーグァン宿泊者

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